文化庁へのパブリックコメント

生成AIについてのパブリックコメントを募集していたので、自分なりの意見を送っておきました。以下がその全文です。

現状、生成AIになにかキャラクターを要求すれば、ほぼそのキャラクターそのものが出力されるところまで学習が進んでいます。
学習の過程や方法などももちろん問題だと思いますが、人間が何かを剽窃するときもそれは同様です。問題は手法ではなく結果です。
キャラクターの名称を入力してほぼそのキャラクターのオフィシャル画像そのものに近いものが出力される現状では、その過程はどうあれ、そのキャラクターを直接剽窃したのと同様の結果が得られるということです。これを可とするなら、人間による同様の行為を不可としていることとの整合がとれません。


「〇〇(既存の創作物)のような画像を生成せよ」と要求して、ほぼその要求通りになるのであれば、それは無許諾の複製となんら違いはありません。
人間による創作物を学習することによって、人間の行為を模倣することを可とするならば、機械による人間の置き換えも可とすることになります。例えば、人間の動作を学習させたロボットがオリンピックでメダルを取ることも良しとする、ということになります。


人間も学習して色々なことを成していますが、しかしそれは、人間が成すことだから人間の文化の継承に寄与するとして認められるものです。もちろん学習した人間も多大な努力をしています。

AIの問題は、人間の種としての能力の向上になんら寄与しないことです。無能な人間があたかも有能なようにふるまうチャンスが増えるだけで、人間の文化的資産を継承・強化することにはなんの役にもたちません。例えば絵なら、AIエンジニアがアルゴリズムの向上にいくら力を注いでも、人間の総力としての画力が向上するわけではない。先に挙げたロボットが金メダルを取る問題で、人間が開発したものにそれができたからといって、人間の身体能力が向上するわけではないのと同じです。
生成AIを認めることは、人間以外のなにかに人権を認めることにほかなりません。しょせんAIが作るものは、すべて人間のこれまでの知的創造を換骨奪胎したもので、そこに人類が前進するための地道な努力はないのです。


学習を忍耐も自己犠牲もなく無限に続けられる機械に、ネット上に善意で公開されている数多の人間の成した行為を徹底して学習させその結果を出力するなら、そこに出来するのは人間の創作の努力が加わっていない、単なる違法コピーであるのは明らかです。それは、特定の創作物との類似性とは別の問題です。プログラムにはゼロから何かを作り出す意思はない、すなわち創作性がない。つまりその生成物は多かれ少なかれ剽窃ということです。


AIが人類にとって何らかの役に立つこともあると思います。しかしその学習素材は、そのように使われることを前提に別途作られたものであるべきです。ネット上のコンテンツを、著作権者への個別の了承なしに学習素材として使用することは著作権侵害と考えますし、そのような手法は人間の種としての前進・向上には何ら寄与しません。怠惰と傲慢を生むだけです。

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