フィルム写真を撮るということ

某所でフィルムで写真を撮っていると言ったら「そんなもの今どきスマホでも同じようなテイストのものが撮れる」と言われました。

正直「はあ?」という感じしかありません。

スマホの光学系は撮像素子が小さく、レンズの焦点距離が短いのでアウトフォーカス部分が大きくボケません。ボケは後処理で作っています。ネットに常時接続しているメリットを活かし、生成AIによって画像加工が施される場合もあります。

この写真だと、上の方の背景の木漏れ日の点光源が楕円状にボケていますね。これを「玉ボケ」や「バブルボケ」といいます。

アウトフォーカス部分は本来、なだらかなグラデーションとなってボケるべきなのですが、オールドレンズは現代のレンズほど性能がよくなかったため、このようなボケになるのです。それを味として楽しんだり作品に活かすのが、オールドレンズやフィルムカメラを使う意味のひとつです。

最新のスマホはこの玉ボケも生成AIで作ってしまいます。正直、スマホのポートレートモードによるボケも、AI玉ボケも、オールドレンズを使い込んでいる者からしたらすぐ分ってしまう程度の偽物っぷりなのですが、それで充分という人がいるのもまあ、理解はできます。しかし、フィルムで撮っている人にそれを言うのは明らかに野暮というものでしょう。

例えるなら往年のミニクーパーMk.1を手塩にかけていじって乗っている人に「そんなちっさい車に高い修理費かけて乗るなら軽自動車にすりゃいいのに」とか言うような野暮っぷりだと思います。自分の狭い世界観で他人の趣味にケチをつけるのはやめたほうがいい。

このページに載せた写真はすべてライカの90年近く前のカメラとレンズで撮っています。見ての通り独特の味がありますが別に普通に撮れる実用品のカメラです。

先人が苦心の末に作り上げ、何人もの人に大事にされ今まで生き残った、歴史の証人のようなカメラを信じるか。

人ならざるものが現実を勝手に歪曲した画像を吐き出す、電話機にオマケで付いているカメラを信じるか。

そういうことなのです。ある意味「主義」や「流儀」の話なので、他人への余計な口出しは無用です。

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