宮城県石巻市は、とってもコンテンツ力が高い街。あの震災による津波被害から力強く立ちなおり、最高に魅力的な街になっています。今回は、私の大好きな街・石巻の魅力をお伝えしようと思います。
釣り
美しいリアスの海では釣りが楽しめます。四季折々の魚たちが力強いファイトを見せてくれますが、中でも私のお気に入りはメバル。
クリクリ目玉の小さい魚ですが、体に似合わない引きをみせる元気者。食べてもおいしいですし、釣り方も繊細で、季節によって場所やルアー操作を変えないと釣果に差が出るテクニカルな魚種でもあります。
とても細い糸を使う繊細な釣りなんですが、ときにはこんなことも。
高級魚、カンパチ君です。40センチに満たないチビちゃんですが、髪の毛のように細い糸を使うメバル用の道具では大苦戦。15分ほどの奮闘の末、何とかキャッチすることができました。あ、これ船での釣果じゃないですよ? そこらへんの漁港です。
釣ったメバルは家族で食べる分だけ持ち帰り、おいしくいただきます。塩焼き、刺身、煮付けと、どんな調理法でもおいしい魚です。
自然現象
牡鹿半島から北の海岸線は「リアス式海岸」となっています。これは、海近くまで急峻な地形を川が削ってできた谷が沈下して、いわゆる「溺れ谷」になったもので、陸地に深く切り込んだような狭い湾が多数あるのが特徴です。陸の部分は切り立って標高100メートルほどの高さになっており、海との間に平坦な部分はほとんどありません。
沖で暖流と寒流がぶつかる三陸の海では、湿った霧が発生しやすく、それが陸に吹き寄せてリアスの小高い陸地にぶつかり雲になります。これを低層雲といいますが、これが海からの風に乗って内陸に吹き寄せ、稲の生育に重要な初夏に、寒気と日照不足をもたらすのが「やませ」です。
かつて凶作は多くの人の命にかかわる一大事でした。宮城と岩手では、やませは大変恐れられる気象だったのです。
これに関係して、珍しい経験をしました。やませの低層雲がじっとりと立ち込める中釣りをしていたら、キャスティングのたびにロッドを持った手がパチパチいうのです。最初は、勢いよく放出されるラインによる静電気かと思ったのですが、いや待てよと。こんなじっとり湿った天候で、細いラインの放出ごときで体感できるほどの静電気が手元に帯電するはずがありません。
そこで気づいたんです。「こりゃマイクロ落雷だ!」
空気中の水の粒子の摩擦によって起きる静電気が周辺の大気中に帯電し、キャスティングで伸びたラインを通じて手にまで伝わっていたのです。まさにフランクリンの凧実験状態。とても珍しい体験でワクワクしましたが、大気が帯電した状態でカーボンロッドを振り回す度胸があるはずもなく、その日はそこで納竿としました。でも、手元をパチパチいわせるくらいしかできないちっちゃなカミナリさんを想像したら、なんだかほっこりでした。
自然の恵みをいただく
現在の石巻市は、いわゆる平成の大合併により、とても広い市域を持つに至りました。かつて、捕鯨の町として有名だった牡鹿町鮎川も石巻市になったのです。
鮎川は牡鹿半島の先端近くに位置し、津波で大きな被害を受け現在は港一帯がすっかり作り直され、モダンな雰囲気になりました。その港近くに位置するカフェが「PORTBALENA」さんです。
カフェではありますが、昼食をしっかり食べられるお店で「クジラの港」という意味の店名だけにクジラ料理が食べられます。
こちら「クジラのユッケ丼」。そもそもクジラを食べられるだけでレアなのに、これで980円ですよ(2024年6月現在)。
クジラのユッケなんて聞くと、癖があるんじゃないかと思われる方もいるかもしれませんが、全然そんなことはありません。もしどうしても勇気が出ないなら竜田揚げがおすすめ。とにかく、ツーリングやドライブのときに寄ってみてください。クジラは日本の大切な食文化の一つだと実感できると思います。
これは、以前行った時に偶然立ち会えたクジラの水揚げの様子。クジラの町だけに、割としょっちゅう水揚げがあるのかと思ったら全然そんなことはないんだそうです。逆にいえばこの巨体ゆえ、それほどたくさんの水揚げがなくてもかなりの経済効果があるということですね。決して乱獲などしているわけではないということです。
末期の水なんでしょうか。海の男たちはとうに死んでいるクジラの口にしばらくの間、水をかけてやっていました。これが何の意味なのかわかりませんが、私は死者に対する敬意に思えました。みなさんフレンドリーだったので、訊いてみればよかったな。
これはツチクジラです。イルカのように細い吻部が特徴ですが全長は15メートルくらいはありました。動物の死体ですから、見る方の感性によっては気にされる方もいるでしょうが、私は全く不快などとは思わず、むしろ厳かな感じすら覚えました。この子の死に比べたら、ただ焼かれて骨になって冷たい墓に入るであろう私の死は、どれだけ意味がないことかと思えてきました。食べられるために生き物が死ぬのは、けして無駄死にではありません。
石巻の信仰
石巻は古くから栄えた街であり、名刹も多数存在しています。そんな中から、私がお勧めする神社を二つご紹介しましょう。
まずは、牡鹿半島の狐崎にある狐崎稲荷神社。こんなに気品があって優しげな母ギツネの像を、私は見たことがありません。御神職がいない無人の小さな神社ですが、なぜか神域全体が神秘的というよりやさしく穏やかな雰囲気なのです。左側に夫君もいらっしゃいますが、本当に素敵なファミリーで、これまでこの神社に関わったすべての方の想いがつまっているようでジーンときてしまいます。
稲荷神社のお狐様は神の使いですが、浜の人たちは彼らを近寄りがたい威厳のある存在ではなく、夫婦円満や子宝の象徴であれと願ったんですね。そういう愛すべき祈りの残照がいまでも漂っているから、私は村社巡りが大好きなんです。
次は、旧河南町広淵にある鹿島神社。ここは大変厳かで静謐な雰囲気の境内で、思わず身が引き締まるのですが…
なぜか狛犬さんが超ファンキー。
比較的最近ペイントされたんだと思います。これをどう思うか。私は「愛されてんなー!」と思いましたね。
地方の村社クラスの小さな神社を守っているのは地元の一般の方達です。そういう方のなかで、腕に覚えのある方がペイントされたんだと思います。この狛犬さん、元の造形も独特なんですがこのペイントがとても決まってると思いませんか? きっとこういうのが、庶民の信仰の形なんだと思います。狛犬さんいつも頑張ってるからドレスアップしてやろうぜ! とか、お狐さんいつ見ても優しそうできれいだなあ、落ち葉掃除していこうか、とか。
今より人の命がずっと軽かった時代から連綿と続く、庶民の切なく一途な祈りを感じることができるのも、石巻の魅力なのです。
アートの話
石巻には「Reborn-Art Festival」という芸術祭があります。これがもうね、最高なんだわ。
このアートフェスがあるために、石巻は私が住んでいる仙台より、文化的に先を行っていると思わせられます。
トリエンナーレだから開催スパンが長いのがもどかしい! とにかく楽しいし、いい作品が大量に展示されるからもう全国から来てほしい。
市内の各地に作品が展示されるんだけど、上のサーフボードに乗る女性像は津波で被害を受けた冷凍倉庫に展示されていました。市街地に近いので、ご老人が自転車で観に来ていて、曰く「何だかよくわがんねけど、楽しいから行けるどこ回ってんだー」って。
じいちゃん、それめちゃくちゃ正しい芸術鑑賞だよ…(ちょっと涙)
強え! ローカルスーパー
まずはこれを見てほしいんですが。石巻ローカルの某スーパーなんですが、どこか違和感を感じませんか?
品名が「鮮魚」って。
普通魚の名前書くよね?
まあ俺は釣りやるから手前の丸いのはマトウダイだってわかります。でも後ろの長いのなに? アオギス? この写真には写ってませんが後ろには「あとはあなたの腕次第!」のポップが高々と。石巻マダムしか対応できねーよ…
これ以外にも「さえずり」(クジラの舌)とか常備してるし。こないだ行ったけど40センチオーバーのアイナメの刺身一匹分、550円でした。もちろん買いました。
コチの刺身とかも普通に売ってるし、タケノコメバルは「ぼいじょ」って思いっきり方言のラベルついてる。濃すぎる。
こういうの見てると、仙台は都会で一見便利だけど、本当に豊かなのはどっちなのか考え込んでしまいます。仙台なら解凍のカツオの刺身みたいな値段で、さっきおろしたばかりの白身魚の高級魚売ってんですからね。
あー、まだ書き足りねえ! 食堂きかくさんのサバだしラーメンも北上川のヨシ原の話も釣石神社もプロショップまるかの思い出も書いてねえ!
パート2に乞うご期待!